自由組太刀とは何か?

自由組太刀とは何か?

フジテレビ「サンドの禁断の一騎打ち」

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今、世界が日本の居合に目を向けている

 国際居合道連盟鵬玉会の道場には、海外からたくさんのお客様がいらっしゃいます。エリザベス女王を警護していた方や、アメリカの特殊部隊デルタフォースの要人。そんな方たちと話していると、居合が持つ長い歴史を背負うという責任はとても大きいのだとあらためて思います。

Martial Artsという概念、それは本当に強いサムライだ

 そんな方たちが期待するのは、形をするだけの居合ではありません。彼らはMartial Artsという概念でサムライの武道をとらえています。それはおそらくディズニープラスで話題であり、世界的なヒットになろうとしている「SHOGUN 将軍」を見ても感じられることでしょう。斬れて当たり前だし、実戦をして当たり前だと憧れてやってくるのです。

 そして、サムライの時代から存在している居合には、それに応える道があります。居合の3つの要素「形(かた)」「組太刀(くみだち)」「試し斬り」です。

居合を構成する「形」「組太刀」「試し斬り」がその期待に応える

(1) 形 仮想敵を想定しながら寸分たがわぬ動きを反復練習し、一人で行うもの。形を繰り返してものにするのは、日本独特のものであり、欧米人はソロパフォーマンスと考える。

(2) 組太刀 打太刀(うちだち;負ける方)、仕太刀(しだち;勝つ方)と決められて、決まった形通りの戦いをするもの。

(3) 試し斬り 抜刀術の団体は多くは「試斬(しざん)」と呼ぶ。

 注意を一つ入れるなら、試し斬りには、流派それぞれの考え方が色濃く出ます。私たち無外流居合においては形の抜き打ちの初太刀で斬れるか、が問われるため、鮮やかに抜きつけることを目指します。無外流の試し斬りは形の抜き打ちの初太刀で斬ることを目標にする。

これは形「右の敵」をアレンジしたものを敵目線で撮影。

やってみなければわからない

 間合いも手の内も、実際に斬ってみなければ「今やっている動きでいいのか」はわかりません。

 同じく組太刀も、やってみなければ実際の間合いや相手の動きがわかりません。わからないまま形をするのは、思い込みになってしまうかもしれず、危険ではないかと思います。

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形につながり、それは居合の宇宙を構成する

 ここまでの考察だけでも、やってみれば「形」のとらえ方が複合的になるだろうと、容易に想像がつくのではないでしょうか。
 「形」「組太刀」「試し斬り」はそれぞれが別のものではなく、それぞれがつながることで居合を立体的に浮かび上がらせるような働きをするような気がします。
 無外流においては先代宗家塩川寶祥先生が、またその直弟子であり私の師であるご当代、明思派宗家新名玉宗先生が強く試し斬りや組太刀の指導もされたのは意味があることだと思います。

 さらに一歩進めてみましょう。

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本当に戦ってみたらどうなるんだろう?

 組太刀が形のままである限り、悪く言ってしまえば手品のようなものです。

 相手がどうするかわかっている、それをさばく、というのは呼吸が合えば鮮やかにできるでしょう。
 この組太刀がいかにうまいからと言って、強いわけではない、というのはそういうことです。

 本当にやってみたらどうなるんだろう、私たちの稽古しているものは、ちゃんと相手の動きに対応できるんだろうか?
 人が「柔道」を連想するときは、敵と組んでいる姿を思い浮かべるでしょう。
 「剣道」なら、面・胴・小手をつけて打ち合っているところを想像するでしょう。
 「空手」なら、突きや蹴りの応酬をしているところを想像するのではないでしょうか。
 なぜ居合だけが、一人で形を舞っている姿を想像するのでしょう。

 かつて空手は「形中心」だったそうです。
 そこに「やってみよう」から始まった、実際に戦う組手が入ってきて、そしてそれが空手を代表するものになりました。
 その戦いにつけられた「自由組手」という名前はおそらく「組太刀」から応用されたネーミングではないかと妄想します。
 なぜなら、「組太刀」という名前が先にあったからです。
 それが極真空手の創始者大山倍達総裁のネーミングによるものか、同時期に大山総裁とやられていた剛柔流の山口豪玄先生によるものかは私は残念ながら知りません。そしてそれはここでは本筋ではないので省きましょう。

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2013年福岡のたつみ寿司にて このとき「自由組太刀」についての構想が表明された。
左から武田鵬玉会長、新名玉宗無外流明思派宗家、日野鬼鳳九州ブロック長(現)

2013年、武田鵬玉会長によって、自由組太刀の概念が誕生

 先に空手に使われてしまいましたが、約束の上に成り立つ形としての「約束組太刀」ではなく、実際に戦う「自由組太刀」をしてみたいと師である新名宗家に表明したのは、2013年の福岡での稽古の後のすし屋でのことでした。
 当然古巣であった極真空手の「組手」の考え方とメソッド、新名宗家から学んだ無外流の組太刀、それも一般の方が知り得ないところまでの知識と経験があって実現するものでした。
 しかし、この道のりはまったく平らかな道ではありませんでした。
 試し斬りをしたことがないトップのいる団体は、門下生に試し斬りを許しません。
 同じように、今までやったことがない「実戦」は、同じ無外流一門であっても「自由組太刀」そのものの存在を無かったかのようにされました。
 実戦にうるさかった無外流先代の塩川宗家、そしてやりたかった新名宗家の思いを継承したのが鵬玉会です。
 これが最大団体の鵬玉会のみが自由組太刀を稽古でき、他会が出場も稽古もない理由です。
 
しかし、武田会長の造語「自由組太刀」は共感を呼んだ

 「自由組太刀」はそれ以前にはなかった、国際居合道連盟鵬玉会の武田会長の造語ですが、それはどこかで共感を呼んだのでしょう。この武田会長の造語を使った事例が散見されるようになりました。
 「実際に戦う」ということは、本当は新しいものではなく、流祖の道場では実際に打ち合っていた逸話はいくつもあります。

自由組太刀はあくまで実際を想定

 やってみれば、このヒリヒリした緊張感はたまらないでしょう。
 「居合」の大会としたのは、武士同士が出会うとき、「抜刀してやってくる」というのは普通ではないからです。
 あくまで納刀した状態からでなければなりません。
 そのとき、「抜刀を簡単にはさせてくれない」敵の存在に気づくでしょう。
 武士の戦いですから、刀同士の戦いでなければなりません。
 サムライの時代、槍を持って歩いていいのは大名行列だけですし、長すぎる刀も同様です。
 だからこの大会は、脇差を使うことまでしか許されていません。
 二刀は大丈夫。
 ただし、二刀であれ、抜刀することができなければなりません。

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可能性はきっと無限大、居合の命は「組太刀」と「試し斬り」

 自由組太刀は選手にとっても可能性があるでしょうが、さらに一般の方への普及という点でも可能性があります。
 これまでの大会で、観客が歓声を上げるのは当たり前となりました。
 そんな居合の大会はありません。
 やって最高、見て興奮する、それが自由組太刀です。
 深いも浅いも関係ない。
 段位も資格も流派も関係ない。
 斬られれば負けなんだから、外国人だってわかります。
 それは大歓声になるのがよくわかろうと言うものです。

時代の変化を知らせる2024年の第8回

 2024年の第8回大会は明治安田様をはじめ、日本が誇るこの武道を次代に残す姿勢に共感した企業様がスポンサーをしてくださいました。
 また、居合の世界初、賞金争奪戦になり、頂点に立った選手が手にしました。
 メディアの注目を集め、フジテレビが上記の番組で試合を再現したのは記憶に新しいところです。
 「居合の技術で戦う、この自由組太刀こそが居合である」
 時代が変化したのを関係者は感じたのです。


武道の根幹は強さである。ならば居合の命は組太刀と試し斬りだ

 初めてみましょう。
 最初は下手くそでもいいじゃないですか。
 残念ながら形がうまかろうが、約束組太刀がいかにそれらしかろうが、自由組太刀の強さとは比例しません。
 でも挑戦してみないとわからない。
 技術の交流は、きっと化学変化を引き起こすはずです。
 次代に残る理由が生まれるはずです。

 武道が強さだけを求めるのは寂しいことです。
 しかし、武道の根幹が強さなのは、間違いありません。
 強くない武道なんて考えられません。
 もし入り口が強さでないなら、その武道は先達の理念から離れた、ただの形骸にすぎません。
 どんな流派の流祖でも、きっとすごかったに違いないからです。
 戻って、武道の根幹が強さなら、居合の命は「組太刀」と「試し斬り」です。
 その組太刀は「自由組太刀」でなければならない。
 その理由は上記の通りです。

第8回大会をダイジェストで見る>>>

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